最近、自分がいかに有用な人間かということを、明らかな嘘をついてまで売り込まなくてはいけない状況になっている。役に立つわけないのに。
こんな時は美術手帖を読むと安心する。美術なんてこれまで何かの役に立ったためしがないのに、その雑誌には精一杯難しい顔して美術について語ってる人たちがたくさん登場する。役に立たなくたっていいかもと、なんだか肩の力がどっと抜けて涙が出そうなくらい安心する。


<読む>
●「今朝冬」内田百間
無垢に見える子供時代からどこか破綻の香りを匂わせているような人物


●「受験生の描く絵は芸術か」荒木慎也
この論文は僕のような画才のない人間には全く縁のない芸大受験産業の実状を取り上げたもので、特に予備校と芸大との力関係の微妙な狂いによって引き起こされた90年代後半のすさまじい”現代芸術的”入試の様子が興味深かった。キャンバスに香水吹きかけただけで芸大に通った時代があったんだそうだ。